人生という長いゲームを、どう戦略的に生きるか

これは本当に自分の人生なのか?

「俺がやりたかったのって、こんな仕事だったっけ?」

40代や50代になって、そんな言葉を口にする人は意外と多い。
実はこのセリフ、私自身が30代半ばの頃に、上司から何気なく聞いた一言でした。

一流企業に勤め、家も持ち、何不自由ない暮らしをしていたその人が、
ふと漏らしたその言葉に、私は凍りつくような衝撃を受けました。

自分も、このままだと同じことを言うんじゃないか?

そんな不安が、胸の奥で静かに芽生えました。


人生は、9回裏が決まっていない“野球”だ

「人生って、すごく長いゲームなんですよ。でも、みんな“次のマイニング”のことしか考えてない」

そう語ったのは、あるキャリア戦略の専門家。
彼は、人生というゲームを攻略するには、3つの視点が必要だといいます。

① 勝利条件を明らかにする

F1レースでも野球でも、勝つためには“いつ終わるか”が分かっていないと戦略が立てられない
野球なら、9回が終わりです。

「1回表で大谷選手を全力投入するかどうか」は、9回まであると知っているからこその戦略です。

人生も同じ。70歳まで働く時代、20代の働き方と50代の働き方が同じでいいわけがありません。


② 使えるリソースは何か?

将棋ならコマ、ポーカーならカード。
人生で使える“リソース”は、自分の時間・体力・お金・人間関係。

特に、時間の価値は年齢によって変わる
20代の“1年”と、40代の“1年”は、重みが全く違うのです。


③ 時間軸を意識する

これが最も見落とされがちで、最も大切な視点。
短期的に合理的に見える行動が、長期では非合理になる──これが、戦略を誤る典型例です。

逆に、短期的には非合理に見える選択が、長期的には圧倒的に合理的になることもある

例えば、20代であえて留学する、複数回転職する、旅に出る。
一見“ふらふらしている”ように見える選択も、「今は“試す”時期」と自分で理解していればいい


20代は「試す」ことのコストが安い

「試すなら20代でやれ」

これは、プロジェクトのロジックとしても極めて合理的です。
なぜなら、20代は時間の単価が低く、失敗のコストが圧倒的に安いから。

40代になると、家族や住宅ローンなどの固定費が増え、
自由にキャリアを“試す”ことが難しくなる。

これは経営戦略で言うところの「高い固定費=オプション価値の低下」。
つまり、身動きが取れない“ロックイン状態”になるのです。


逆張りを成功させるには「度胸」じゃなく「ロジック」

他の人と違う道を歩むとき、必要なのは“勇気”や“度胸”ではない。
必要なのは、「戦略的に合理性が見えているかどうか」。

「何となく自信がある」「感覚で動く」では、絶対に失敗します

逆張りの決断ができるのは、**論理的に思考を積み上げた量(=思考の累積量)**がある人だけ。
自分の時間資本を、どの分野にどう投入するか?
その設計ができていないと、道を踏み外すリスクが高くなる。


強みは“他人に真似できないもの”だけが意味を持つ

「自分の強みは何か?」

キャリア本によく出てくる問いですが、これはかなりミスリーディングな質問です。

「クラスで1番得意」レベルでは、マーケットでは通用しません。
「他人に真似できない」レベルの能力だけが、競争優位になるのです。

ロジカルシンキングや語学力は、勉強すれば誰でも身につきます。
つまり、真似可能=競争優位にならない

では、何が真似できないのか?

それは“時間をかけて蓄積された知識や経験”です。
たとえば、子どもの頃から歴史や哲学に夢中だった人のリベラルアーツの知識。
これは、20年・30年かけて形成されたユニークなリソースで、誰にも模倣できない。


人生の賞味期限は10年。ポジションを移し続けろ

「美味しいポジションの賞味期限は10年」

これは非常に重要な考え方です。
ある産業・企業で“おいしい思い”ができる期間は、長くて10年程度

つまり、その後の“居場所”を変えられる準備をしておかないと、必ず腐るということ。

実際に、多くの一流企業では優秀な社員を意図的に部署異動させることで、
コンフォートゾーンから出すような設計になっています。

「居心地の良い場所に10年以上居続けるのは、戦略的に非常に危険」

この意識を持つかどうかで、キャリアの柔軟性と成長速度は大きく変わります


リベラルアーツは、腐らない投資である

では、人生において「腐らない投資」とは何か?

それがリベラルアーツです。

今のように社会が不確実性に満ちている時代では、
流行のスキルや知識ではなく、“普遍的な知”にこそ価値がある

MBAのような経営学は「必要な人が学べばいい」ですが、
人文科学・歴史・哲学・心理学・宗教といった学びは、

あらゆる領域で応用が効く“知のベース”**になります。

これは投資で言うと「ネットプレゼントバリュー(現在価値)が高い資産」。

つまり、時間をかけても腐らず、むしろ熟成されて価値を高める“知識資本”なのです。


まとめ:キャリアとは、自分の“戦略”で構築するもの

キャリアにおいて最も重要なのは、
「自分だけのユニークなリソース × 戦略的ポジショニング」

このかけ算によって、他人に真似できない競争優位を築くことができる

20代は試し続けて、“自分だけの資産”をつくる期間

30代以降は、それをレバレッジして、“戦略的に時間を投入するステージ”

そして40代以降は、それまでの積み重ねをもとに、新しい自分にギアチェンジする転換点です。


最後に──「好き」や「夢中」は最大の武器になる

「今、欲しいのは“頑張る人”ではなく、“夢中になる人”です」

これは、ある講演の中で最も心に残った言葉の一つです。
人工知能が流行る前の“冬の時代”に、それでもAIを学び続けた人たち。
彼らは流行りだからではなく、ただ“夢中だった”から学び続けました。

結果として、今や彼らは世界中から求められる存在になっています。

オタクであること、夢中になれることこそが、最強の武器になる。

流行よりも、自分の“熱量”に素直になってください。
それが、誰にも真似できない“あなたの人生戦略”になるはずです。