内定を呼び込む魔法の15秒——元NHKキャスター直伝の話し方

最初の15秒が未来を変える——『大人の話し方』に学ぶ就活必勝コミュニケーション

就活の面接室に入った瞬間、あなたは何を考えますか。

「笑顔を忘れないように」
「名前を噛まないように」
「第一印象は大事だから姿勢を正そう」

もちろん、それらは大切です。
でも――もっと大切なことがあるのを、知っていましたか?

人は、最初の15秒で相手の印象を決める。
そして、その印象は後からひっくり返すのがとても難しいのです。

今日ご紹介する一冊は、その“最初の15秒”で相手の心を掴み、信頼を勝ち取る方法を教えてくれる本。

NHKキャスター歴17年、要人スピーチコンサルタントとして各界のVIPをサポートし、さらに大学准教授として教壇にも立つ矢野香さんの新刊、『最初の15秒でスッと打ち解ける大人の話し方』(日本経済新聞出版)です。


就活は「自分らしさ」だけでは勝てない

ここ数年、就活本やSNSでは「自分らしさを大切に」というメッセージがあふれています。
もちろん、それは間違っていません。

ただし、それだけで面接を突破できるほど甘くはありません。

なぜなら、面接官は「自分らしさ」だけでなく、「この人と一緒に働けるか」も見ているからです。

本書のテーマは「人心掌握」。

これは決して“相手を操作する”という意味ではありません。相手が心を開き、話を聞く体勢になってくれるように、自分の接し方を工夫することです。

矢野さんは、アナウンサーという人と接する最前線の現場で培った技術を、誰でも使える形にして教えてくれます。


面接の入り口で差がつく——15秒の魔法

矢野さんが強調するのは、15秒は会話の一単位だということ。
たとえば面接。

部屋に入り、椅子に座って自己紹介をするまでの短い時間で、
「この人は敵ではない」という安心感を相手に与えることが重要です。

たとえば――

「本日は、私の大学生活の集大成である〇〇の経験についてお話させていただきます。」

このように、結論から切り出す
背景説明から入るより、相手の耳にスッと届きます。

逆に、だらだらと「えっと、私は…」と始めてしまうと、相手は「結局この人は何を話すのか」と身構えてしまいます。


数字で語ると信頼感が増す

自己PRでありがちな失敗が「あいまいな表現」です。

  • 「ほとんどのメンバーが参加してくれました」
  • 「なるべく早く対応しました」

これを矢野さんはこう直します。

  • 「98個納品されました」
  • 「本日の夕方5時までに提出します」

数字は、あなたの言葉に証拠を与えます。
就活でも、たとえばアルバイト経験を話すときに、

「1日で平均30杯のコーヒーを提供しました」
「売上前年比120%を達成しました」

と具体的に言えば、面接官はその光景をイメージしやすくなります。


食事と飲み物で距離を縮める

本書には意外なテクニックもあります。
それが、相手と同じものを注文すること。

たとえば、面接後の懇親会や内定者顔合わせの席で、
「私も今日は魚の気分です」とさらっと同じメニューを選ぶ。

さらに、飲み物の温度も合わせるという一歩進んだ方法。
なぜ温度なのか?

答えはシンプルで、飲むタイミングが同じになるからです。
つまり、会話のリズムが揃うのです。

これは就活の場面にも応用可能です。企業説明会やカフェでのOB訪問など、同じ温度の飲み物を頼むだけで、無意識に親近感を与えられます。


聞き方ひとつで相手の反応が変わる

面接官やOB・OGへの質問タイム。
ここでも矢野さんの技が光ります。

よくある質問に「秘訣は何ですか?」というものがありますが、これは少し圧迫感がある言い方。
代わりに「秘訣があるのでしょうね」と投げかけると、相手は柔らかい気持ちで話してくれます。

同じ意味の質問でも、言い方ひとつで距離感が大きく変わるのです。


就活でそのまま使えるチェックリスト

本書の中で、特に就活生がすぐ使えるポイントをまとめると、こうなります。

  • 最初の15秒で安心感を与える
  • 結論から話す
  • 話は1分以内にまとめる
  • 食事や飲み物を相手と合わせる
  • 所要時間は具体的に伝える
  • 質問は「確認」に変える
  • 言いづらいことこそ目を見て言う
  • 数字を入れて話す
  • 2回目に会うときは「この前は〇〇をありがとうございました」から始める

これらをすべて意識すれば、面接や交流会での印象は確実にアップします。


実践シーン① 模擬面接

面接官:「自己紹介をお願いします」
学生:「本日は、私が学生時代に力を入れたイベント企画についてお話させていただきます。年間で延べ1200人を動員し、前年比150%の集客を達成しました。」

最初の15秒で数字と成果を明確に伝えています。
この時点で、面接官は「この学生は話が具体的で分かりやすい」と感じます。


実践シーン② OB訪問

OB:「飲み物、何にします?」
学生:「では、同じくアイスコーヒーをいただきます」

会話のテンポが自然に一致し、和やかな雰囲気が生まれます。
その後の質問も、「秘訣は何ですか?」ではなく、
「この成果には、きっと工夫があったのでしょうね」と柔らかく切り出すことで、OBも話しやすくなります。


私たちが忘れがちなこと

就活は「自分をアピールする場」ですが、
それと同じくらい大切なのが、相手が話しやすい空気をつくることです。

相手が居心地よく感じることで、こちらの印象は何倍にも良くなります。
これは単なるマナーではなく、将来社会人として働くうえでの大事な基礎です。


まとめ——15秒の魔法を使いこなそう

就活で勝つ人は、特別な才能を持っているとは限りません。
相手の心を開く技術を持っている人です。

矢野さんの本は、そのための具体的な方法がぎっしり詰まっています。
若いうちに身につければ、社会に出てからもずっと役立つでしょう。

最初の15秒。
この短い時間をどう使うかで、面接の結果も、そして未来も変わります。