ESもブログも変わる。“自分の言葉”で書くためのヒント

あなたの文章、ちゃんと「自分の言葉」ですか?

自己PRを書くとき、履歴書の志望動機を書くとき──

頭の中では「こう言いたい」があるのに、手が止まる。何度も書き直しても、どこか教科書っぽい。

面接官や採用担当者に読まれても、「あ、これテンプレだな」と思われてしまう気がする。そんな経験、ありませんか?


“自分の言葉”で書くことの意味

今回紹介するのは、コピーライター歴25年、3万件以上の案件を手掛けた著者が教える文章術の本『自分の言葉で書く』です。

この本は、ただ「うまく書く」ためではなく、**「あなた自身の価値を、相手に伝わる形に変換する」ための方法が詰まっています。

著者は冒頭でこう語ります。

自分が言いたいことを、相手が知りたいこと・相手に伝わることに変換する

就活に置き換えれば、

「私は頑張り屋です」という自己満足の宣言ではなく、「頑張り屋であることが、御社のどんな場面で役立つのか」を伝えることです。


読者を振り向かせる2つの方法

本書で印象的だったのは、文章の入り口をどう作るかという話。
著者はこう言います。

  1. 定説や常識の逆を考える
  2. 読者が間違っていたことや勘違いを切り口にする

例えば、就活のブログ記事なら、
「面接では緊張してはいけない」という定説の逆をついて、
「緊張こそ最高の武器になる理由」と書き出す。

それだけで読者(面接を控えた学生)の目が止まります。


相手にとっての価値を3つの視点で考える

就活文章でよくある失敗は、「自分が書きたいこと」を優先しすぎること。
著者は、相手にとっての価値を次の3つの視点で探せと言います。

  1. 変化:「AがBになる」
    例:アルバイトの経験で、接客が苦手だった自分が、常連客から名指しで呼ばれるようになった。
  2. ギャップ:「○○ではなく—」
    例:体育会系だから根性がある、ではなく、数字分析が得意な体育会系。
  3. テンションが上がる:書いている本人がワクワクしていること。

この「変化」「ギャップ」「テンション」は、自己PRや志望動機にもそのまま使えます。


タイトルと書き出しの型を知っておく

文章が最後まで読まれるかどうかは、タイトルと冒頭で決まります。
本書では7つのおすすめパターンを紹介しています。

  • 結論から書く
  • 数字を入れる
  • 逆説
  • 問題提起・疑問文
  • 擬音・感嘆詞
  • セリフ
  • シーン描写

例えば、「私の強みは責任感です」よりも、

「バイト先で“責任感がなさすぎる”と言われた私が変わった理由」

のほうが、続きを読みたくなりませんか?


“大テーマ”を持つことが文章を強くする

著者は「何を書くかを決める前に、大きなテーマを持て」とも言います。
就活でいうと、「私はどんな人間として社会に出たいのか」がそのテーマです。

テーマがあると、文章やエピソードに一貫性が出ます。
そして一貫性は、読んだ人に安心感と信頼感を与えます。


日常から素材を集める習慣

良い文章は、一晩で書けるものではありません。
著者はまず、「とにかくメモする」「書いたことを消さない」と勧めます。
メモは就活でも有効です。

面接練習で指摘されたこと、アルバイトでやらかしたこと、友達との会話で気づいたこと──
こうした断片が、後で自己PRや志望動機の“ネタ”になります。


感情ではなくシーンを書く

自己PRで「嬉しかった」「悔しかった」と感情だけを書いても、相手はピンときません。

著者は「感情はシーンで伝える」と言います。

  • × 「嬉しかった」
  • ○ 「お客様から“あなたに接客してもらえて良かった”と言われた」

感情を具体的な場面で見せると、相手がその瞬間を想像しやすくなります。


まとめ:文章は“才能”ではなく“設計”で変わる

『自分の言葉で書く』を読んで感じたのは、文章はセンスや才能の問題ではないということ。
就活の自己PRも、設計図(テーマ・切り口・型)があれば、誰でも魅力的に書けます。

時間をかけてでも、あなたの“大テーマ”を見つけてください。
そして、それを自分の言葉で伝えてください。

企業はあなたの完璧な文章ではなく、あなた自身の物語を知りたがっています。

就活自己PR・実践リライト編

──『自分の言葉で書く』メソッドで“刺さる”文章に変える

まずは「よくある自己PR」の例

就活サイトや就活本によく載っている、テンプレ感のある自己PRがこちらです。


【Before】よくある自己PR

私の強みは責任感です。アルバイトでは任された業務を最後までやり遂げるように心がけてきました。特に忙しい時期には、シフトの穴を埋めるために積極的に出勤しました。その結果、店長から信頼してもらえるようになりました。御社でも責任感を持って仕事に取り組み、貢献したいと考えています。


問題点

  • 抽象的:「責任感がある」と言われても、人によってイメージが違う
  • シーン不足:実際にどんな行動を取ったのかが見えにくい
  • 相手の価値視点が弱い:企業にとって何がメリットなのかが不明確
  • テンプレ感:「御社でも責任感を持って…」は誰でも言える

『自分の言葉で書く』流の設計ステップ

  1. 大テーマを決める
    → 「困難な状況でも周囲を支える力」
  2. 相手にとっての価値を3視点で考える
    • 変化:受け身だった自分が、店全体を支える存在になった
    • ギャップ:人見知りだったが、誰よりもシフトに入る存在になった
    • テンション:緊急時の達成感が好き
  3. 読者を振り向かせる入り口を作る
    → 常識の逆(例:「私は責任感がある」ではなく、「もともと責任感がなかった」)
  4. シーン描写で感情を伝える
    → 抽象的な「忙しい」ではなく、「レジ前に10人以上の行列ができた」など具体化
  5. 相手の行動イメージを描く結論にする
    → 企業で同じ行動を再現する未来像で締める

【After】“自分の言葉”で書き直した自己PR

もともと私は、責任感が強いタイプではありませんでした。アルバイトを始めた当初は、シフト変更を頼まれても「予定があるので…」と断ることが多かったのです。
そんな私が変わったきっかけは、ある土曜日の昼。レジ前に10人以上の行列ができ、厨房では注文が詰まり、店長は急なトラブルで不在という状況になりました。混乱する同僚を前に、「自分がやらなければ」とレジも調理も掛け持ちで動きました。
その日を境に、「誰かが困っているときは自分が動く」と決め、以降は学業の合間を縫ってシフトの穴を埋めるようになりました。半年後、店長から「君がいると安心できる」と言われたとき、この変化を誇りに思いました。
御社でも、想定外の事態に直面したときほど力を発揮し、チームを支える存在として貢献します。


Before→Afterで変わったこと

  • 具体的なシーン描写で責任感の根拠が明確になった
  • 変化のストーリーで人間味が出た
  • 企業での再現性がイメージできる締めくくりになった
  • 抽象語を減らし、**「私にしか書けない文章」**になった

まとめ

『自分の言葉で書く』のメソッドは、就活自己PRでもそのまま使えます。重要なのは「良いことを書く」ではなく、「事実を、自分の言葉で、相手の価値になる形に変換する」こと。

テンプレ自己PRを一度ゼロから見直し、あなたの大テーマと変化の物語を組み立ててみてください。