「書類では完璧だったのに、すぐに辞めてしまった」
「カルチャーが合わず、早期退職が続いている」
こうした採用後のミスマッチに、心当たりはありませんか?
時代は「選ぶ採用」から「選ばれる採用」へと、確実にシフトしています。
本号では、Z世代を中心とした若年層の価値観変化と、企業が直面する“採用の7つの罠”、そして今後求められる「スタイルマッチ型採用」の視点を、第一線の実践者の知見を交えてご紹介します。
✅ いま採用がうまくいかない理由:7つの罠
多くの企業が無意識のうちに陥っている「採用の罠」。
その典型例を整理すると、次の7つに分類されます。
① スペック依存症
給与や福利厚生などの条件(=スペック)だけに頼る発信では、Z世代には響かない。
求められているのは、**自社ならではの「経験価値」や「働き方のリアル」**です。
② 社員不在の採用広報
経営層やエース社員ばかりが登場するコンテンツでは、リアルなイメージが湧かない。
若手や現場社員のリアルな声の多様性こそが、信頼を生みます。
③ 抽象的な表現ばかりのPR
「人がいい」「成長できる」などの“良いこと風”の言葉では響かない。
行動エピソード(具体例)を伴って語ることが不可欠です。
④ 理想像だけの一方通行な発信
理想像を語るだけでは、「自分には関係ない」と思われてしまいます。
背伸びしすぎず、“普通の社員のリアル”を届けることが共感を呼びます。
⑤ 独りよがりの情報設計
発信したい情報ではなく、求職者が知りたい情報を届ける視点が抜けているケースが多い。
「見られる」ではなく「見に来てもらう」ための情報設計を。
⑥ “優秀人材”という幻想
「何でもできるスーパーマン」を想定して採用ターゲットを描いていませんか?
実在する人材像を、現実的かつ具体的に言語化することが重要です。
⑦ 昭和・平成型の採用手法に固執
ナビサイト、合同説明会、パンフレット。従来型の接点だけではもう届きません。
SNS、社員発信、動画コンテンツなど、求職者の日常に溶け込むメディア活用が不可欠です。
💡採用成功のカギ:「B面(=スタイル)」を見せられるか?
Z世代は「自分らしく働ける環境」を重視しています。
企業の“表側の顔”だけでなく、次のような**“B面”情報**への関心が高まっています。
Z世代が特に重視する情報
優先度 | 見たい情報 | 内容 |
---|---|---|
★★★★★ | 1日の仕事の流れ | 実在する社員の「リアルな1日」 |
★★★★☆ | 福利厚生の実態 | 生活やライフスタイルにどう影響するか |
★★★★☆ | 社内の人間関係 | チーム内の呼び方、雰囲気、距離感 |
たとえば、「ある社員の1日に密着した動画」や、「社員同士の対談コンテンツ」など、台本なし・ありのままの姿を見せる取り組みが高い効果を上げています。
🧭 Z世代に届く採用メディア戦略
ノーカンパニー社の調査では、Z世代の6割以上がSNSで企業を検索しているという結果も。
特に使われているSNS(就活目的)
- X(旧Twitter):圧倒的1位。
→ キーワード検索やレコメンドで企業に自然接触 - Instagram / TikTok:日常の延長として視聴
→ ストーリーズや短尺動画が効果的
🔄「カルチャー」から「スタイル」へ:新たな採用マッチングの軸
これまで主流だった**カルチャーマッチ(=企業文化や理念)**では、不十分になってきています。
▶ スタイルマッチとは?
企業の「価値観」や「行動様式」と、個人の「働き方スタイル」の合致。
4つの視点でスタイルを言語化せよ
秋山氏が提唱するスタイルフレームワークは、以下の4象限で構成されます。
観点 | 事業視点 | 組織視点 |
---|---|---|
会社側 | ビジョン・社会意義 | 組織文化・意思決定の型 |
個人側 | 職種ごとの成果観 | チームの関係性・働き方 |
- 会社視点の理念や制度だけでなく、
- 個人視点の判断軸や日常行動まで踏み込むことで、ミスマッチを防ぐことができます。
🎯 実践アクションガイド:すぐに始められる5つの取組み
✅ | アクション | 説明 |
---|---|---|
✔ | 社員の「ある1日」をSNSやHPで紹介 | スケジュール、悩み、交流などリアルを重視 |
✔ | 対談コンテンツを制作(社員×社員) | 呼び方や距離感に“関係性”が滲む |
✔ | MBTIや価値観をオープンに発信 | 自社の「性格」も見える化 |
✔ | 福利厚生の「使い方」を動画で紹介 | 単なる制度紹介ではなく体験視点で |
✔ | 社内に「スタイルワークシート」を導入 | 働き方・判断基準を言語化する社内施策に |
✉ 結びに:選ばれる企業へ、いまこそ採用の見直しを
採用は、ただの人材確保ではありません。
「共に働くことを選んでもらう行為」そのものです。
人材の多様化、価値観の細分化、そしてAIによる情報収集の高度化により、企業が見せるべき情報も大きく変わりました。
これからの時代に必要なのは、「うちの会社らしい働き方=スタイル」を明文化し、それを社員の声で伝える力です。