人生という長いゲームで勝つために――短期的“正解”から自由になる就活戦略

「40代で“これじゃなかった”って言い出すのが一番ヤバいんです」
―そんな一言に、私はドキッとしました。

今、多くの学生が「正解の就活」に追われています。
早めに内定を取って、安定した会社に入って、順調なキャリアを築く。
でも、それって本当に“正解”なのでしょうか?

今回のテーマは、人生を長期視点で戦略的に捉えるという考え方。
経営戦略のプロが語る、**「キャリアにおけるよい戦略」と「悪い戦略」**の違いから、あなたの就活のヒントを掘り出していきます。


時間軸が見えないと、戦略は立てられない

人生は例えるなら、野球のようなゲーム。
でも就活において、多くの人は“今の一打席”しか見えていません。

「今、いい企業に入ること」だけを目指して、
人生という“長い試合”を見ていない。

例えば、野球には「9回で終わる」というルールがあります。
だからこそ、先発ピッチャーは6回まで、7回から抑えを出そう――そんな戦略が立てられる。

でも、もし「何回まであるか分からない試合」だったらどうですか?
全力投球のタイミングも、力を抜く場面もわからないまま、常に迷い続けてしまうでしょう。

戦略には“時間の終わり”が必要なんです。

人生だって同じ。
「70歳まで働く」と仮定すれば、20代は“試す時期”、**30代は“集中投資の時期”**など、自分なりの試合展開が見えてきます。


いい戦略とは?短期的には不合理に見えるもの

いい戦略の定義をご存じですか?

「短期的には不合理に見えるけれど、長期的には合理的」

これが、経営の世界でも個人のキャリアでも、共通する「よい戦略」の特徴です。

なぜなら、短期で合理的なことは、競合もすぐにマネできるからです。
一方で、短期的には“変わり者”に見える選択――例えば20代で2年ごとに転職したり、世界一周に出かけたり――は、一見不安定で非効率に見えるかもしれません。

でも、本人の中で「今は試すフェーズ」という明確な意図があれば、それは立派な戦略です。


人生に必要なのは、“試すコスト”が安い時期の活用

「試すコストは20代と40代で、まったく違う」

この言葉には、多くの社会人がうなずくはずです。

20代は失敗しても大きな代償になりにくい。
転職もやり直しも可能。独身であれば固定費も低く、フットワークも軽い。

でも40代になれば、家族ができ、住宅ローンを抱え、挑戦できる余白がどんどん減っていきます。

それなのに、多くの人が20代で“安定”を求め、
40代で「これじゃなかった」と迷い始める。

これは本当に“最悪の戦略”なのです。


逆張りできる人の共通点は?――度胸じゃない、ロジックだ

「他人と違う選択をするのって、やっぱり怖いですよね」
でも、成功する人は必ず逆張りを経験しています。

では、その決断に必要なものは何か?
答えは“度胸”ではなく、“戦略的合理性”です。

何を目的に、なぜその道を選ぶのか。
自分の中に“論理の蓄積”があれば、怖くても進める。

逆に、ただの思いつきや感情だけで「みんなと違うことをしてやろう」とすれば、必ず失敗します。

見えていない人には、リスク。
見えている人には、チャンス。

だからこそ、**考え抜く力(思考の蓄積量)**がものを言います。


強みを探すな。真似できない“積み重ね”を探せ

キャリアの教科書にはこう書かれています。

「自分の強みを見つけよう」

でも、これは誤解を招く問いでもあります。

例えば「絵が得意」「文章が書ける」――その程度の“強み”では、市場で通用しません。

マーケットで武器になるのは、「他者が真似できない経験や知識」だけ

例えば、AIがブームになる20年前からずっと研究してきた人。
それが今、爆発的に価値を持つようになったのは、「流行ってなかった時代」にも夢中になれたからです。

だから本当に問うべきは、
**「自分が長く続けてきたこと」「他者が模倣できないこと」**なんです。


人生の“賞味期限”は10年ごとにやってくる

「おいしいポジションにい続けられるのは、せいぜい10年」

これは企業でも個人でも同じ。
社会の構造変化が激しい今、どんな優位性も10年で陳腐化していきます。

だからこそ、10年ごとに“自分の場所”を見直す習慣が必要です。

トヨタのような大企業でも、エース社員を意図的に異動させ、
「コンフォートゾーン」に居座らせない仕組みをつくっています。


数を打て。イノベーションは“失敗の数”からしか生まれない

「イノベーションは才能の結果ではなく、“打席数”の結果である」

これは、イノベーターたちの研究から導かれた事実です。

たくさんの挑戦をして、たくさん失敗して、
その中の1つが世の中を変える。

極めてダメなアウトプットなしに、極めて良いアウトプットは生まれない

若いうちに失敗しても、誰も覚えていません。
でも、挑戦しなかったことは、後で自分を縛ります。


“腐らない投資”をしよう――最強の学びはリベラルアーツ

最後に、戦略家が語った「最もリターンが高い投資」をご紹介します。

それは、リベラルアーツ(人文・哲学・歴史・心理)です。

時代に左右される“スキル”ではなく、
**時間が経っても腐らない“知恵”**にこそ、価値がある。

この先どんな時代が来ても、人間の本質を捉える力だけは色褪せません。


まとめ:就活こそ、人生戦略のスタート地点

ここまで紹介してきた話は、すべて就活にもつながっています。

  • 20代は試す時期。安定よりも打席に立つことを優先しよう。
  • 自分の強みではなく、真似できない“蓄積”を探そう。
  • 一見“非合理”な選択こそ、長期的には勝つ道である。

就活はゴールではありません。
**長い人生ゲームの「序盤戦」**でしかないのです。

目の前の“勝ち”だけにとらわれず、
自分だけの“戦略”を描いて、10年後に笑っていられる選択を。

今日のこの記事が、あなたの人生戦略の一歩となりますように。