「住宅ローンだけ組んで、やめました」
思わず笑ってしまうこのセリフ。でも、そこには深い“気づき”が詰まっていました。
就活の「正解」は、大企業に入ることなのか?
「大企業に入った方がいいんですか?」
これは、就活生なら誰もが一度は考える質問です。
ある講演会で、こう尋ねられたスピーカーの男性は、はっきりとこう答えました。
「僕は“入っとけ派”ですね」
大企業に入れるチャンスは、新卒しかない場合が多い。だからこそ、そのチャンスがあるなら活かすべきだ、と彼は言います。
日本社会はまだまだ“新卒一括採用”の構造が根強く、最初にどこに入ったかが**その後のキャリアの「通行証」**になることが少なくありません。つまり、新卒である程度の知名度がある会社に入れば、転職の時にも履歴書で評価されやすいのです。
入れない人は、どうすればいい?
もちろん、全員が大企業に入れるわけではありません。
「じゃあ、大企業に入れなかった人はどうすればいいんでしょうか?」
この問いに対し、彼の答えは意外でした。
「キャリアを会社の中で積み上げるのって、あんまり意味ないと思ってて」
会社にしがみつくのではなく、自分で引き出しを増やすことが大切だと彼は言います。
彼が20代だった頃、まだITが一般的でなかった時代に、自分でサイトを作って中小企業の経営者にメールを送り、会ってもらっていたそうです。
「たぶん10通送れば2〜3通は返事がきて、会ってくれました」
意外かもしれませんが、40代以上の中小企業の経営者の中には、若者と会いたい・何かを教えたいと思っている人が多いんです。
「殻」と「檻」──気づかぬうちに自分を縛るもの
キャリアの話が進む中で、印象的だったのがこの言葉。
「最初は“殻”だったものが、気づけば“鉄の檻”になってる」
この表現は、社会学者マックス・ウェーバーの著書からの引用です。
彼は新卒で大企業に入り、順調に出世。若くして部長や子会社の代表も経験しました。誰もが「成功」と呼ぶようなキャリアでした。
でも、ある日、ふと思ったそうです。
「このまま3年いたら、たぶん“檻”になるなって思ったんです」
そこから彼は思い切って会社を辞めます。そして、「住宅ローンだけは組んでおいた」と笑いながら言いました。もちろん笑い話ですが、それくらい覚悟をもって飛び出したということです。
本当に欲しいものに向き合う勇気
彼の決断の背景には、子どもの頃からの夢がありました。
「ワイドショーで大きな家を見て、住んでみたいなって思ってたんです」
けれど、社会に出ると現実を前にして、夢を自分で否定してしまうようになった。
「本当は欲しいのに、“いらない”って言ってるんじゃないかって、途中で気づいたんですよ」
だからこそ、自分の本心に向き合い、リスクを取って動いた。その原動力は、「後悔したくない」という思いだったのかもしれません。
偶然をキャリアに変える方法
「面白い人に誘われたら、とりあえず乗る」
これはもう一人のスピーカーが語ったスタンスです。
彼は、キャリアの作り方を「偶然の発見」と表現しました。誘われたことに乗る、気になるイベントに行ってみる、新しい技術に触れてみる——そうやって偶然の積み重ねが、やがてキャリアになるのだと言います。
もちろん、すべてが成功するわけではありません。でも、
「失敗したら、戻ればいいんです」
そう言えるのは、選択肢を多く持っているから。そして、最初に「大企業で足場を作る」という選択が、そういう“戻る場所”を用意してくれることもあるのです。
波を待ち、波に乗る。準備はできているか?
「事業って、波が来なかったらどれだけ働いても無理なんですよ」
彼が語った事業の本質も印象的でした。
全力で働いても、タイミングや社会のニーズに合わなければうまくいかない。逆に、波が来た瞬間に動けるかどうかが勝負だと。
では、その“波”に乗るにはどうすればいいのか?
「とにかく、バットを振り続けること」
これは、ある起業家の言葉を引用したものでした。野球でもビジネスでも、突然上手くなる瞬間があります。でもそれは、何度もバットを振った人にしか訪れない。
だからこそ、「いつでも波に乗れる準備」をしておくことが重要なのです。
就活は、最初の一歩。だけど、その後は無限に広がっている
就活は、人生のすべてじゃありません。
でも、最初の選択が、その後の選択肢を広げてくれることがあるのも事実です。
大企業に入れるなら、入ってみてもいい。
入れなかったら、自分から行動して道を切り開けばいい。
そして、本当にやりたいことが見つかったとき、波が来たときに飛び込めるように、準備しておく。
そのすべてが「正解」になりうるのが、これからの時代のキャリアです。
あなたの「夢」は、どこにありますか?
「僕はただ、大きな家に住みたかっただけなんですよ」
この言葉に、笑いながらも胸を打たれました。
キャリアって、きっとそんなシンプルな動機から始まるものです。
だからこそ、自分の「欲しい」を素直に認めてみてください。
そして、もし今の自分が少しでも動ける余地があるなら、小さな一歩でも踏み出してみてください。
バットを振っていれば、きっとどこかで“波”が来ます。そのとき、あなたはもう、「乗れる準備」ができているはずです。
最後に──就活は、通過点。選択肢を捨てないで
新卒という枠組みは、たしかに日本ではまだ強い。
でも、それがすべてではありません。
一番大切なのは、「どんな人生を生きたいか」
焦らなくて大丈夫。
答えは、あなたの中にあります。