「スペック」から「スタイル」へ。Z世代に選ばれるための新基準とは?

「書類では完璧だったのに、すぐに辞めてしまった」
「カルチャーが合わず、早期退職が続いている」

こうした採用後のミスマッチに、心当たりはありませんか?
時代は「選ぶ採用」から「選ばれる採用」へと、確実にシフトしています。

本号では、Z世代を中心とした若年層の価値観変化と、企業が直面する“採用の7つの罠”、そして今後求められる「スタイルマッチ型採用」の視点を、第一線の実践者の知見を交えてご紹介します。


✅ いま採用がうまくいかない理由:7つの罠

多くの企業が無意識のうちに陥っている「採用の罠」。
その典型例を整理すると、次の7つに分類されます。


スペック依存症

給与や福利厚生などの条件(=スペック)だけに頼る発信では、Z世代には響かない。
求められているのは、**自社ならではの「経験価値」や「働き方のリアル」**です。


社員不在の採用広報

経営層やエース社員ばかりが登場するコンテンツでは、リアルなイメージが湧かない。
若手や現場社員のリアルな声の多様性こそが、信頼を生みます。


抽象的な表現ばかりのPR

「人がいい」「成長できる」などの“良いこと風”の言葉では響かない。
行動エピソード(具体例)を伴って語ることが不可欠です。


理想像だけの一方通行な発信

理想像を語るだけでは、「自分には関係ない」と思われてしまいます。
背伸びしすぎず、“普通の社員のリアル”を届けることが共感を呼びます。


独りよがりの情報設計

発信したい情報ではなく、求職者が知りたい情報を届ける視点が抜けているケースが多い。
「見られる」ではなく「見に来てもらう」ための情報設計を。


“優秀人材”という幻想

「何でもできるスーパーマン」を想定して採用ターゲットを描いていませんか?
実在する人材像を、現実的かつ具体的に言語化することが重要です。


昭和・平成型の採用手法に固執

ナビサイト、合同説明会、パンフレット。従来型の接点だけではもう届きません。
SNS、社員発信、動画コンテンツなど、求職者の日常に溶け込むメディア活用が不可欠です。


💡採用成功のカギ:「B面(=スタイル)」を見せられるか?

Z世代は「自分らしく働ける環境」を重視しています。
企業の“表側の顔”だけでなく、次のような**“B面”情報**への関心が高まっています。


Z世代が特に重視する情報

優先度見たい情報内容
★★★★★1日の仕事の流れ実在する社員の「リアルな1日」
★★★★☆福利厚生の実態生活やライフスタイルにどう影響するか
★★★★☆社内の人間関係チーム内の呼び方、雰囲気、距離感

たとえば、「ある社員の1日に密着した動画」や、「社員同士の対談コンテンツ」など、台本なし・ありのままの姿を見せる取り組みが高い効果を上げています。


🧭 Z世代に届く採用メディア戦略

ノーカンパニー社の調査では、Z世代の6割以上がSNSで企業を検索しているという結果も。

特に使われているSNS(就活目的)

  • X(旧Twitter):圧倒的1位。
     → キーワード検索やレコメンドで企業に自然接触
  • Instagram / TikTok:日常の延長として視聴
     → ストーリーズや短尺動画が効果的

🔄「カルチャー」から「スタイル」へ:新たな採用マッチングの軸

これまで主流だった**カルチャーマッチ(=企業文化や理念)**では、不十分になってきています。

▶ スタイルマッチとは?
企業の「価値観」や「行動様式」と、個人の「働き方スタイル」の合致。


4つの視点でスタイルを言語化せよ

秋山氏が提唱するスタイルフレームワークは、以下の4象限で構成されます。

観点事業視点組織視点
会社側ビジョン・社会意義組織文化・意思決定の型
個人側職種ごとの成果観チームの関係性・働き方
  • 会社視点の理念や制度だけでなく、
  • 個人視点の判断軸や日常行動まで踏み込むことで、ミスマッチを防ぐことができます。

🎯 実践アクションガイド:すぐに始められる5つの取組み

アクション説明
社員の「ある1日」をSNSやHPで紹介スケジュール、悩み、交流などリアルを重視
対談コンテンツを制作(社員×社員)呼び方や距離感に“関係性”が滲む
MBTIや価値観をオープンに発信自社の「性格」も見える化
福利厚生の「使い方」を動画で紹介単なる制度紹介ではなく体験視点で
社内に「スタイルワークシート」を導入働き方・判断基準を言語化する社内施策に

✉ 結びに:選ばれる企業へ、いまこそ採用の見直しを

採用は、ただの人材確保ではありません。
「共に働くことを選んでもらう行為」そのものです。

人材の多様化、価値観の細分化、そしてAIによる情報収集の高度化により、企業が見せるべき情報も大きく変わりました

これからの時代に必要なのは、「うちの会社らしい働き方=スタイル」を明文化し、それを社員の声で伝える力です。