「5つの誤解」──キャリアにまつわる危険な思い込み
キャリアや転職について多くの人が抱きがちな5つの誤解を紹介します。
- 転職活動のゴールは転職であるという誤解
- キャリアアップこそ全てという誤解
- 同じ会社にとどまるのはリスクという誤解
- 転職するなら40歳までという誤解
- 転職しないとキャリアは変えられないという誤解
言われてみれば、思い当たる節がある。自分もどこかで、これらを「正しいこと」として信じ込んでいた。
転職の目的は「転職」じゃない?
まず驚いたのは、「転職活動のゴール=転職」という常識が誤解だということ。
「転職活動をしてみて、結果として転職しないのも“成功”なんです」
転職活動を通じて、現職の良さに気づく人もいる。副業やスキルアップに目覚める人もいる。
つまり、**転職活動は“キャリアを自分で考え直すための時間”**でもあるのだ。
キャリアを動かす“コンパス”とは?
これからの時代に必要なのは、詳細な地図ではなく、自分なりのコンパスを持つこと。
「キャリアプラン=地図」では、予期せぬ変化に対応できない。会社が突然方向転換する、技術革新で職種がなくなる──そんな時代に、固定された地図はむしろ足かせになる。
「自分の“北極星”を見つけて、そこに向かう感覚が大事なんです」
北極星とは、自分が本当にやりたいこと。現在地(=自分の立ち位置)を知り、進みたい方向を自分で定める。それが「キャリアオーナーシップ」であり、変化に強いキャリアの土台になる。
キャリアアップではなく、キャリアの“掛け合わせ”へ
これまで多くの人が信じてきた「キャリアアップ」。肩書きが上がり、収入が増える。けれど、その考え方にも大きな誤解がある。
「キャリアとは歩んできた道=轍(わだち)であり、スキルとはその中で身につけた能力」
だからこそ、キャリアは**“上”に行くものだけではない**。
たとえば、同じ会社内で部署を異動する。アナウンサーから営業、経理へと横断する。あるいは、ひとつの職種を極めて“深く”掘り下げる。
これらすべてが、キャリアの「横」や「中心」への広がりだ。
「三角錐のように、横にも中にも広がるのが“キャリアコーン”」
つまり、キャリアは上に登るだけの“はしご”ではない。横にも、深くにも広がる立体的な構造なのだ。
転職は“タグを増やす”ための手段
転職や副業をすることで、新しいタグ=経験やスキルの引き出しが増えていく。
大企業でのブランド力。スタートアップでのスピード感。社内で培った専門性と、社外で得た横のつながり。
それらを掛け合わせて“希少性”をつくることが、今の時代のキャリア戦略。
「スキル×キャリア=価値を生み出せるのが、今のキャリアの形」
“配属ガチャ”も、視点を変えれば武器になる
望んでいなかった部署に配属された。希望の仕事じゃなかった。
でも、それもキャリアの掛け合わせで考えれば、価値になる。
「たとえば、経理経験がある営業マン。あるいは、番組を“作る側”も“出る側”も経験しているアナウンサー」
そうしたユニークなキャリアの組み合わせこそが、今後の社会で求められる“強み”になっていく。
キャリアを支える“アンカー”と“偶然”の力
キャリアを築くうえで、自分の根っこ=キャリアアンカーを知ることはとても大切。
それは「ものづくり」や「人の役に立ちたい」といった、価値観に根ざしたテーマ。
さらに、もう一つ重要なのが「計画された偶発性(Planned Happenstance)」という考え方。
「キャリアの8割は“偶然”で決まると言われています」
だからこそ、普段から行動し、情報を取りに行き、準備しておくことが重要になる。
たとえば、たった一通のTwitter DMが、キャリアの転機になることだってある。
キャリアは、自分で創っていくもの
「キャリアって、結局なんですか?」
そう聞かれたとき、あなたならどう答えるだろう。
それは名刺に書かれた肩書きでも、年収の金額でもない。
「キャリアとは、自分が歩んできた“道そのもの”。
そして、これからどんな価値を生み出すかという“可能性”でもあるんです」
まとめ:キャリアの誤解を解いた、その先に
この講義で伝えられたのは、「キャリアは一本の道じゃない」ということ。
- キャリアは地図ではなく、コンパスを頼りに進むもの
- スキルとキャリアの“掛け合わせ”が価値を生む
- 自分の根っこ(キャリアアンカー)を知り、偶然を味方にする
- 「キャリアアップ」だけを追わず、横にも深くも広げていく
これらを理解することで、キャリアに対する視界が一気に開けるはずだ。
あなたにとっての“北極星”は何ですか?
今、キャリアに迷っているあなたへ。
完璧な地図を持っていなくても大丈夫。大切なのは、自分だけの“コンパス”を手に入れること。
たとえ今はぼんやりしていても、それでもいい。少しずつ、自分の北極星を探していけばいい。
そして、いつか振り返ったとき、あなたのキャリアの“轍”が、世界にひとつだけのストーリーになっているはずです。
「キャリアとは、地図を描くことではなく、自分の道をつくっていくこと」
その一歩を、今日から始めてみませんか。